Anthropic出資のPACがAI規制推進候補を支援──ニューヨーク選挙区でAI業界が真っ二つに

Anthropicが2,000万ドルを出資した政治団体「Public First Action」が、ニューヨーク州第12選挙区の連邦議会選挙に出馬するAlex Bores氏を支援することが明らかになった。Bores氏はAI開発者に安全対策の開示と重大インシデントの報告を義務付ける「RAISE法」の立案者として知られ、対立するAIスーパーPAC「Leading the Future」から激しい攻撃を受けている。AI業界の規制をめぐり、巨額の資金が選挙戦に投入される異例の事態となっている。

この記事のポイント

  • Anthropicが2,000万ドルを出資した「Public First Action」が、AI安全規制の推進者であるAlex Bores氏の選挙戦を45万ドルで支援
  • 対抗するスーパーPAC「Leading the Future」はAndreessen Horowitz、OpenAI共同創業者Greg Brockman、Perplexity、Palantir共同創業者Joe Lonsdaleなどから1億2,500万ドル以上を調達し、Bores氏への攻撃広告に約110万ドルを投入
  • 2025年12月にニューヨーク州で署名されたRAISE法をめぐり、AI業界が規制推進派と規制反対派に二分される構図が2026年中間選挙の争点に浮上

RAISE法とは何か──AI安全規制の先駆け

RAISE法(Responsible AI Safety and Education Act)は、ニューヨーク州議会議員のAlex Bores氏と州上院議員のAndrew Gounardes氏が共同で提案した法案で、2025年12月19日にKathy Hochul知事によって署名・成立した。この法律は、大規模AIモデルの開発者に対して安全プロトコルの公開を義務付けるとともに、重大なインシデントが発生した場合には72時間以内に州当局へ報告することを求める。「重大な被害(critical harm)」の定義は、100人以上の死亡または重傷、あるいは10億ドル以上の損害とされており、化学兵器の開発支援や大規模な自動化犯罪行為の防止が主な対象となっている。さらに、金融サービス局内に監視オフィスを新設し、大規模フロンティアモデルの開発者を評価する体制を整備する。Bores氏はこの法律について「AI安全規制の基準を引き上げた」と評価し、今後のさらなる開示・学習・立法活動の基盤になると述べている。

対立する2つのAIスーパーPAC──資金力で圧倒する反規制派

この選挙戦の最大の特徴は、AI業界を代表する2つの政治活動委員会(PAC)が同一の選挙区で真っ向から対立している点にある。Anthropicが出資する「Public First Action」はAI規制の適切な導入を支持する立場をとり、30〜50人の候補者(両党から)を支援する計画を掲げている。ニューヨーク第12選挙区ではBores氏の支援に45万ドルを投入している。一方、「Leading the Future」はベンチャーキャピタル大手のAndreessen Horowitz(a16z)、OpenAI共同創業者のGreg Brockman、AI検索スタートアップのPerplexity、Palantir共同創業者のJoe Lonsdaleなどから1億2,500万ドル以上を調達しており、資金力では圧倒的な差がある。同PACはすでにBores氏への攻撃広告に約110万ドルを費やしており、AI規制を「イノベーションへの障害」と位置づけて反対キャンペーンを展開している。

Anthropicの戦略的ポジショニング──競合他社との差別化

Anthropicが2,000万ドルという巨額をPublic First Actionに寄付した背景には、同社の独自の戦略がある。AnthropicはClaude AIの開発元として知られるが、OpenAIやGoogle、Metaなどの競合他社とは異なり、創業当初から「AI安全性」を企業理念の中核に据えてきた。RAISE法のような透明性と安全性を重視する規制は、Anthropicのブランドイメージと一致しており、規制推進派を支援することは自社の競争優位性を高めることにもつながる。一方で、OpenAIの共同創業者が反規制派のPACに出資していることは、同じAI業界内でも規制に対するスタンスが大きく異なることを如実に示している。この対立構造は、2026年中間選挙において「AI規制」が主要な政策争点の1つになりつつあることを意味しており、テクノロジー業界の政治的影響力がかつてないレベルに達していることを物語っている。

2026年中間選挙への影響──AI政策が選挙の争点に

ニューヨーク第12選挙区の戦いは、2026年中間選挙におけるAI政策論争の「最初の火種」と位置づけられている。テクノロジー業界からの選挙資金が合計1億2,500万ドル以上にのぼる規模で流入しており、AI規制をめぐる議論が選挙戦の中心テーマとなっている。Public First Actionは今後30〜50の選挙区で同様の支援活動を展開する計画であり、Leading the Futureもさらなる候補者への攻撃を予告している。このまま両陣営の対立がエスカレートすれば、AI規制の在り方が有権者の投票行動に直接影響を与える初めてのケースとなる可能性がある。AI開発者にとっても、規制環境の行方が事業戦略に直結するため、この選挙の結果は業界全体に波及効果をもたらすだろう。

知っておくと便利なTips

  • RAISE法はニューヨーク州法だが、連邦レベルでの同様の規制議論にも影響を与える先例となっている。今後の連邦AI規制法案の動向にも注目が必要
  • PACとスーパーPACの違い:通常のPACは候補者への直接献金に上限があるが、スーパーPACは無制限の資金を「独立支出」として使えるため、攻撃広告や支援キャンペーンに巨額を投入できる
  • Claude Codeユーザーとして注目すべきは、Anthropicが「責任あるAI開発」を政治的にも推進している点。安全性を重視する企業文化が製品開発にも反映されている

まとめ

Anthropicが出資するPublic First Actionが、AI安全規制の推進者であるAlex Bores氏を支援するためにニューヨーク第12選挙区に参入した。これはBores氏が提案・成立させたRAISE法をめぐり、AI業界が規制推進派と反対派に二分される構図を鮮明にした出来事である。反規制派のLeading the Futureが1億2,500万ドル以上の資金力で攻勢をかける中、Anthropicは2,000万ドルの出資で対抗姿勢を示した。2026年中間選挙においてAI政策が主要争点として浮上しており、この戦いの行方はAI業界全体の規制環境を左右する可能性がある。Claude Codeの開発元であるAnthropicが政治の場でも安全性重視の姿勢を貫いていることは、同社の製品やサービスの方向性を理解する上でも重要な動きといえるだろう。


📎 元記事: https://techcrunch.com/2026/02/20/anthropic-funded-group-backs-candidate-attacked-by-rival-ai-super-pac/

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