カナダ発のAIスタートアップCohereが、2025年の年間経常収益(ARR)で2億4,000万ドル(約360億円)を突破したことが明らかになりました。OpenAIやAnthropicとの競争が激化する中、エンタープライズ向けAIへの強い需要を背景に、同社はIPO(新規株式公開)に向けた準備を着々と進めています。
この記事のポイント
- Cohereの2025年ARRが2億4,000万ドルを超え、エンタープライズAI市場での存在感を示した
- OpenAI・Anthropicとの競争が激化する中でも、独自のポジショニングで成長を続けている
- IPOに向けた動きが本格化しており、AI業界の上場ラッシュの先駆けとなる可能性がある
Cohereとは何者か?エンタープライズAIに特化した戦略
Cohereは2019年にカナダ・トロントで設立されたAIスタートアップです。Google Brainの元研究者であるAidan Gomez氏が共同創業し、Transformer論文の共著者としても知られています。同社の最大の特徴は、消費者向けのチャットボットではなく、企業向けのAIソリューションに徹底的にフォーカスしている点です。大規模言語モデル(LLM)を企業の業務システムに組み込むためのAPIやプラットフォームを提供しており、金融機関、法律事務所、テクノロジー企業など幅広い業種の顧客を抱えています。OpenAIがChatGPTで一般消費者の注目を集め、AnthropicがClaudeで安全性を前面に押し出す中、Cohereは「企業の実務に使えるAI」という明確な差別化戦略を貫いてきました。この戦略が功を奏し、年間経常収益2.4億ドルという数字に結実したと言えるでしょう。
2.4億ドルの意味――エンタープライズAI需要の証明
ARR 2億4,000万ドルという数字は、エンタープライズAI市場の成熟と急成長を如実に物語っています。この数字は単なる売上ではなく「経常収益」であり、顧客企業が継続的にCohereのサービスを利用し、サブスクリプション契約を維持していることを意味します。つまり、AIが一過性のブームではなく、企業のインフラとして定着しつつあることの証拠です。2024年から2025年にかけて、多くの企業がAIの概念実証(PoC)段階から本番運用へと移行しました。Cohereはこの波を正確に捉え、企業が求めるセキュリティ、プライバシー、カスタマイズ性を備えたソリューションを提供することで、急速に収益を伸ばしてきたのです。
IPOへの道筋と市場環境
CohereのIPO検討は、AI業界全体にとって重要なマイルストーンとなります。2025年後半から2026年にかけて、テック企業のIPO市場は徐々に回復基調にあり、特にAI関連企業への投資家の関心は非常に高い状態が続いています。Cohereがもし上場を果たせば、OpenAIやAnthropicに先駆けてパブリックマーケットでの評価を受ける最初の大型AI企業の一つとなる可能性があります。ただし、課題もあります。OpenAIは圧倒的な知名度と資金力を持ち、AnthropicもAmazonやGoogleからの巨額出資を受けています。Cohereがこれらの巨人と差別化を図りながら、公開市場で投資家を納得させる成長ストーリーを描けるかどうかが鍵となるでしょう。
AI業界の競争地図とCohereの立ち位置
エンタープライズAI市場は現在、複数のレイヤーで激しい競争が繰り広げられています。基盤モデル層ではOpenAI、Anthropic、Google、Metaが覇権を争い、アプリケーション層ではMicrosoft、Salesforce、SAPなどの大手がAI機能を自社製品に統合しています。Cohereはこの中間に位置し、「自社でモデルを開発しつつ、企業向けに使いやすい形で提供する」という独自のポジションを確立しています。特に、オンプレミスやプライベートクラウドでの展開を重視している点は、データの外部流出を嫌う金融・医療・政府機関にとって大きな魅力です。この「デプロイメントの柔軟性」が、Cohereの競争優位の源泉と言えるでしょう。
知っておくと便利なTips
- エンタープライズAIを評価する際は、ARR(年間経常収益)の成長率だけでなく、顧客の契約継続率(Net Revenue Retention)にも注目すると、製品の定着度が見えてくる
- AI企業のIPOを検討する投資家は、売上だけでなくGPUコストや推論コストの推移を確認することで、収益性の持続可能性を判断できる
- Cohereのようなエンタープライズ向けAI企業と、OpenAIのような消費者向けも手掛ける企業では、ビジネスモデルの評価軸が大きく異なる点に留意が必要
まとめ
CohereのARR 2.4億ドル突破は、エンタープライズAI市場が本格的な成長フェーズに入ったことを示す象徴的な出来事です。OpenAIやAnthropicが注目を集める中、Cohereは企業向けに特化した戦略で着実に地位を固めてきました。IPOが実現すれば、AI業界初の大型上場として市場に大きなインパクトを与えるでしょう。Claude Codeユーザーにとっても、AIスタートアップの競争環境を理解することは、技術トレンドの行方を読む上で重要です。Anthropicの競合がどのように成長し、市場がどの方向に動いているのかを注視していく価値があります。
📎 元記事: https://techcrunch.com/2026/02/13/coheres-240m-year-sets-stage-for-ipo/


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