AIエージェントがAPIを大量に消費する時代が到来しています。チャットボット、自律ワークフロー、インテリジェントな自動化システムなど、あらゆるAI搭載アプリケーションがバックエンドサービスとAPIを通じてやり取りする必要があります。しかし、従来のAPIゲートウェイはコードを書く人間の開発者向けに設計されたものであり、リアルタイムで判断を下す自律型AIエージェント向けには作られていません。この課題を解決するために登場したのが「AIゲートウェイ」という新しいカテゴリです。本記事では、この分野のリーダーであるWSO2とKongの2つのプラットフォームを徹底比較します。
この記事のポイント
- AIエージェント向けAPIゲートウェイという新カテゴリが誕生し、セマンティックキャッシュ、モデルルーティング、プロンプトインジェクション防御、トークンガバナンス、MCP対応などが求められている
- Kongはプラグインベースの拡張アプローチ、WSO2はAIネイティブなプラットフォームアプローチという根本的に異なる設計思想を持つ
- 既存のKong環境にAI機能を追加したい場合はKong、AIファーストで本格的なAIガバナンスが必要な場合はWSO2が適している
AIゲートウェイとは何か?
AIゲートウェイとは、AIエージェントのトラフィックが持つ固有の要件に対応するために設計されたAPI管理プラットフォームです。従来のAPIゲートウェイが処理するリクエスト・レスポンスのプロキシ機能に加えて、以下のようなAI特有の機能を提供します。
- セマンティックキャッシュ: 意味的に同じクエリに対してキャッシュされた応答を返す
- モデルルーティング: リクエストの内容に応じて最適なAIモデルに振り分ける
- プロンプトインジェクション防御: 悪意あるプロンプト操作からシステムを保護する
- トークンガバナンス: AIモデルのトークン使用量を管理・制限する
- MCP(Model Context Protocol)対応: AIエージェントが外部ツールやデータソースに安全にアクセスするためのプロトコルをサポート
これらの機能は、人間の開発者が手動でAPIを呼び出す従来のパターンとは根本的に異なる要件であり、専用のゲートウェイが必要とされる理由です。
設計思想の違い:統合型 vs 拡張型
WSO2とKongの最も根本的な違いは、機能リストではなくアーキテクチャの設計思想にあります。
Kongのアプローチ:プラグインベースの拡張
Kongは既存のAPIゲートウェイインフラの上にプラグインとしてAI機能を追加する方式を採用しています。具体的な導入手順は以下の通りです。
- Kong Gateway(オープンソースまたはエンタープライズ版)をデプロイ
- AI Gateway Pluginをインストール
- AIプロバイダー(OpenAI、Anthropic、Azure OpenAIなど)を設定
- Kongのプロキシを通じてAIトランスフォーメーションを適用したトラフィックをルーティング
メリット: すでにKongを従来のAPI管理に使用している場合、AI機能の追加は比較的容易です。プラグインアーキテクチャにより、インフラ全体を変更することなく特定のルートに対して選択的にAI機能を有効化できます。
制約: プラグインは機能を拡張しますが、アーキテクチャそのものを根本的に変えるものではありません。Kongのコア設計はリクエスト・レスポンスのプロキシを前提としているため、セマンティックキャッシュやマルチモデルオーケストレーションといったAI特有の最適化は、基盤となるプロキシモデルの制約を受けます。
WSO2のアプローチ:AIネイティブプラットフォーム
WSO2はAIゲートウェイを専用設計のプラットフォームとして構築しました。既存のAPI管理機能にAI機能を後付けするのではなく、AIエージェントのトラフィックパターンを前提とした設計が行われています。これにより、セマンティックキャッシュやモデルルーティングなどの機能がアーキテクチャレベルで統合されており、プラグインによる制約を受けません。
選定のポイント:どちらを選ぶべきか
両プラットフォームの選択は、組織の現状と目指す方向性によって決まります。
Kongが適しているケース
- すでにKongを本番環境でAPI管理に使用している
- 既存インフラへの影響を最小限にしてAI機能を追加したい
- プラグインエコシステムの柔軟性を重視する
- 段階的にAI機能を導入していきたい
WSO2が適しているケース
- AIファーストの戦略でゲートウェイを導入する
- セマンティックキャッシュやマルチモデルオーケストレーションなど高度なAI機能が必須
- 本格的なAIガバナンス(トークン管理、プロンプト防御)が求められる
- MCP対応を含む包括的なAIエージェント管理が必要
知っておくと便利なTips
- AIゲートウェイを検討する際は、まず自社のAIエージェントがどのような通信パターンを持つかを分析することが重要です。単純なリクエスト・レスポンスなのか、複雑なマルチモデルオーケストレーションが必要なのかで最適解が変わります
- MCP(Model Context Protocol)はAIエージェントが外部ツールに安全にアクセスするための標準プロトコルとして注目されており、今後のAIゲートウェイ選定では対応状況の確認が欠かせません
- プロンプトインジェクション防御は、AIエージェントをAPIゲートウェイ経由で公開する際のセキュリティ上の最重要課題です。ゲートウェイレベルでの対策が可能かどうかを確認しましょう
まとめ
AIエージェントの急速な普及により、従来のAPIゲートウェイでは対応しきれない新たな要件が生まれています。WSO2とKongはそれぞれ異なるアプローチでこの課題に取り組んでおり、どちらが優れているかではなく、自組織の状況に合った選択をすることが重要です。すでにKongを運用中で段階的にAI対応を進めたい場合はKongのプラグインアプローチが有効であり、AIネイティブな基盤を一から構築する場合はWSO2の統合アプローチが強みを発揮します。いずれにせよ、AIゲートウェイは今後のエンタープライズAI戦略における重要なインフラ要素となることは間違いありません。
📎 元記事: https://dev.to/taramarjanovic/wso2-ai-gateway-vs-kong-which-platform-powers-your-ai-strategy-57pp


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