動画プラットフォーム「TikTok」が展開するEコマース機能「TikTok Shop」が、日本市場で急速に成長している。2025年6月末のサービス開始からわずか半年あまりで、商品を販売するクリエイターが20万人を超え、販売事業者数も5万社に到達した。利用者数は初月と比較して20倍に拡大しており、先行する17カ国と比べても順調な成長を見せている。一方で、日本特有の課題として、企業PR案件に慣れた動画投稿者へのアフィリエイトモデルの浸透が挙げられている。
この記事のポイント
- TikTok Shopの日本版クリエイター数が20万人、販売事業者数が5万社を突破
- 利用者数は初月の20倍に成長し、先行17カ国と比較しても順調
- 日本市場では成果報酬型(アフィリエイト)モデルの訴求が課題
TikTok Shopの急成長と数字の裏側
TikTokは2026年2月3日、日本におけるTikTok Shopの成長実績を発表した。2025年6月末にサービスを開始してから約8カ月で、商品を販売するクリエイターの数は20万人を超えた。この数字は、動画コンテンツとEコマースの融合が日本市場においても受け入れられつつあることを示している。
販売事業者数も5万社に達しており、個人クリエイターだけでなく、企業側もTikTok Shopを販売チャネルとして積極的に活用し始めていることがわかる。利用者数が初月から20倍に拡大したという点は特に注目に値する。これは単なるプラットフォームの認知拡大にとどまらず、実際の購買行動がTikTok上で定着しつつあることを意味している。
さらに、TikTok Shopは日本に先行して17カ国でサービスを展開しており、それらの国々の同時期の成長率と比較しても、日本市場の伸びは順調だとされている。東南アジアなどで爆発的な成長を見せたTikTok Shopが、成熟した日本のEC市場でも存在感を示し始めている。
日本市場特有の課題──PR案件文化とアフィリエイトの壁
一方で、日本市場には独自の課題がある。それは、動画投稿者(インフルエンサー)の収益モデルに関する「文化的なギャップ」だ。日本では、企業からの固定報酬型PR案件(いわゆるタイアップ案件)が主流となっており、多くのクリエイターがこの仕組みに慣れている。企業PR案件では、動画を1本投稿するだけで数万円から数十万円の固定報酬が得られるケースも少なくない。
これに対し、TikTok Shopが採用しているのは成果報酬型(アフィリエイト)モデルだ。クリエイターが商品を紹介し、実際に購入が発生した場合にのみ報酬が支払われる仕組みである。このモデルは、売上に直結するため事業者側にとってはリスクが低く合理的だが、クリエイター側から見ると、固定報酬のPR案件と比較して収益の見通しが立ちにくい。
TikTok側としては、成果報酬型モデルの魅力をいかにクリエイターに伝え、参加を促すかが重要な課題となっている。実際に成果報酬型で高収益を上げているクリエイターの事例紹介や、売上データの可視化ツールの提供など、クリエイターが「稼げる」と実感できる環境づくりが求められるだろう。
ソーシャルコマースの世界的潮流と日本への影響
TikTok Shopの成長は、世界的な「ソーシャルコマース」のトレンドの一部として捉えることができる。中国では「抖音(ドウイン)」を通じたライブコマースが巨大市場を形成しており、東南アジアでもTikTok Shopは主要なECプラットフォームの一つとなっている。
日本のEC市場はAmazon、楽天、Yahoo!ショッピングといった既存プレイヤーが強固な地位を築いているが、TikTok Shopは「発見型コマース」という新しいアプローチで差別化を図っている。ユーザーが能動的に商品を検索するのではなく、動画コンテンツを楽しむ中で自然に商品と出会い、そのまま購入に至るという体験は、従来のECとは本質的に異なるものだ。
特に若年層を中心としたTikTokユーザーにとって、信頼するクリエイターが実際に使っている商品をその場で購入できるというシームレスな体験は魅力的であり、今後もこの市場は拡大していく可能性が高い。
クリエイターエコノミーへの波及効果
TikTok Shopの拡大は、日本のクリエイターエコノミー全体にも影響を与える可能性がある。これまで企業PR案件に依存していたクリエイターの収益構造が多様化し、自分自身で商品を選び、紹介し、成果に応じた報酬を得るという自律的なビジネスモデルが広がるかもしれない。
20万人のクリエイターがTikTok Shopに参加しているという事実は、少なくとも一部のクリエイターがこの新しいモデルに可能性を見出していることを示している。今後は、成功事例の蓄積とともに、より多くのクリエイターが成果報酬型ECに参入することが期待される。
知っておくと便利なTips
- TikTok Shopは「発見型コマース」として、従来の検索型ECとは異なるユーザー体験を提供しており、特にニッチな商品やトレンド商品との相性が良い
- 成果報酬型モデルでは、商品レビューやハウツー動画など、購買意欲を直接喚起するコンテンツが高い成果を生みやすい傾向がある
- 日本を含め18カ国で展開されているTikTok Shopの動向は、今後のECトレンドやインフルエンサーマーケティングの方向性を占う指標として注目に値する
まとめ
TikTok Shopは日本市場で着実に成長を遂げており、クリエイター20万人・販売事業者5万社という数字がそれを裏付けている。先行する17カ国と比較しても順調な伸びを見せている点は、日本のEC市場においてもソーシャルコマースが受け入れられつつあることの証左だ。ただし、固定報酬型のPR案件に慣れた日本のクリエイター文化との折り合いをどうつけるかが、今後の成長の鍵となる。成果報酬型モデルの魅力をいかに訴求し、クリエイターと事業者の双方にとって持続可能なエコシステムを構築できるかが問われている。
📎 元記事: https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2602/06/news126.html


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