AIエージェントには共通の致命的な弱点があります。それは「すべてを忘れてしまう」こと。セッションが終わるたびに記憶はリセットされ、コンテキストウィンドウはいずれ圧縮されます。この問題を解決するために開発されたのが「Claude Cortex」です。本記事では、AIエージェントに人間の脳のような記憶システムを実装した事例を詳しく紹介します。
この記事のポイント
- AIエージェントの「記憶喪失」問題とその深刻さ
- Claude Cortexによる人間の記憶システムを模倣したソリューション
- MCP(Model Context Protocol)を活用した実装方法
- 短期記憶・長期記憶・エピソード記憶の3層構造
問題の本質:設計上の記憶喪失
記事の著者は「Jarvis」というAIアシスタントを運用しています。JarvisはClawdbotプラットフォーム上で動作するClaude搭載エージェントで、メールのトリアージからインフラ監視まで、様々なビジネスタスクを処理しています。
しかし、根本的な問題がありました。コンテキストウィンドウには限界があり、セッションは再起動され、会話履歴は圧縮されてしまいます。Jarvisが起動するたびに、まるで記憶喪失の人と会うようなもの。自分が誰か、ビジネスの内容、セキュリティプロトコル、重要なサーバーについて、毎回説明し直す必要がありました。
著者らはマークダウンファイル、メモリログ、日次ノートなど明らかな解決策を試しましたが、これらは粗削りでした。「今日コーヒーを飲んだ」という情報と「本番データベースの認証情報が変更された」という情報を区別する仕組みがなく、すべてが同じ平坦なテキストとして扱われていたのです。
必要だったのは、人間の記憶により近い仕組みでした。
解決策:Claude Cortex
Claude Cortexは、AIエージェントに適切な記憶システムを提供するMCP(Model Context Protocol)サーバーです。npmパッケージとして公開されており、以下の機能を備えています。
短期記憶(Short-term memory)
最近のコンテキストを保持し、高いアクセス性と速い減衰を特徴とします。直近の会話や作業内容を一時的に記憶します。
長期記憶(Long-term memory)
統合された知識を保存し、ゆっくりとした減衰と高い耐久性を持ちます。重要な情報は長期間保持されます。
エピソード記憶(Episodic memory)
特定の瞬間に紐づいたイベントベースの想起を可能にします。「いつ、何が起きたか」を記録します。
重要度検出(Salience detection)
各記憶の重要度を0.0〜1.0のスコアで自動評価します。これにより、些細な情報と重大な情報を区別できます。
時間的減衰(Temporal decay)
古くて重要度の低い記憶は自然に薄れていきます。人間の記憶と同様に、忘却のプロセスが組み込まれています。
統合(Consolidation)
重要であることが証明された短期記憶は、長期記憶に昇格します。繰り返し参照される情報や、高い重要度を持つ情報が優先的に保持されます。
すべてのデータはSQLiteでローカルに保存され、クラウド依存はゼロです。プライバシーとセキュリティを重視する環境でも安心して使用できます。
統合方法:MCP + mcporter
Clawdbotはmcporterを通じてMCPサーバーをサポートしています。mcporterは、MCPサーバーを呼び出し可能なツールにブリッジするツールです。
記事ではMCPサーバーの設定例が示されています。JSON形式でmcpServersを定義し、claude-cortexサーバーを接続することで、AIエージェントが記憶機能を利用できるようになります。
この統合により、Jarvisは以下のことが可能になりました:
– セッション間で重要な情報を保持
– ビジネスコンテキストの自動想起
– 過去のインシデントや決定事項の参照
– ユーザーの好みや作業パターンの学習
知っておくと便利なTips
- Claude Cortexはnpmパッケージとして公開されており、
@mkdelta221/claude-cortexでインストール可能 - SQLiteベースなので、データのバックアップや移行が容易
- 重要度スコアリングにより、ストレージの肥大化を防ぎながら本当に必要な情報を保持できる
- MCPサーバーとして実装されているため、Claude以外のLLMでも理論上は利用可能
まとめ
AIエージェントの記憶喪失問題は、実用的なAIアシスタントを構築する上で大きな障壁でした。Claude Cortexは、人間の記憶システムを模倣したアプローチで、この問題に対する洗練された解決策を提供しています。短期記憶、長期記憶、エピソード記憶の3層構造、重要度検出、時間的減衰、記憶の統合といった機能により、AIエージェントは真の意味で「学習」し「記憶」することが可能になります。クラウド依存がなくローカルで完結する設計も、プライバシーを重視する現代において大きなメリットです。AIエージェントをより賢く、より人間的にしたい開発者にとって、注目すべきプロジェクトと言えるでしょう。
📎 元記事: https://dev.to/mkdelta221/i-gave-my-ai-agent-a-brain-heres-how-claude-cortex-changed-everything-59dl


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