化粧品メーカーのウテナが、生成AIを活用した屋外広告が既存アニメ作品に酷似していると指摘を受け、公式YouTube動画の削除および交通広告の撤去を発表しました。生成AIによるクリエイティブ制作が広がる中、著作権や類似性をめぐる新たな課題が浮き彫りとなった事例です。
この記事のポイント
- ウテナの化粧品屋外広告が「セーラームーンに似ている」とSNSで物議
- ウテナは2026年5月6日に謝罪し、YouTube動画削除と交通広告撤去を発表
- 生成AIを使った広告制作における類似性リスクが改めて注目される事案
何が起きたのか
化粧品・スキンケア商品を手掛ける株式会社ウテナ(東京都世田谷区)は2026年5月6日、同社の化粧品ブランドに関する屋外広告および動画広告が、既存アニメ作品「美少女戦士セーラームーン」に酷似しているとSNS上で指摘を受け、物議を呼んだ問題について公式に謝罪を発表しました。
問題となった広告は、駅構内などに掲出されていた交通広告と、公式YouTubeチャンネルで公開されていた動画広告です。キャラクターのポーズ、髪型、衣装の配色、構図などが「セーラームーン」の登場人物に類似しているとSNS上で拡散され、批判が集中しました。同社は事態を受けて、公式YouTube動画の削除および交通広告の即時撤去を決定したと発表しています。
生成AIと著作権・類似性の問題
本件で特に注目されているのが、広告クリエイティブの制作過程で生成AIが活用されていたとされる点です。近年、企業の広告・販促物制作において画像生成AIの活用が急速に広がっていますが、AIが学習データから既存作品の特徴を強く反映した出力を生成してしまうケースが指摘されています。
生成AIによるアウトプットは、プロンプトの指示や参照画像によって、特定の既存作品に酷似したビジュアルが意図せず生成されるリスクを抱えています。今回のケースでは、最終的なチェック工程で類似性が見抜かれず、そのまま広告として展開されてしまったとみられます。企業が生成AIを商業利用する際には、出力物が既存の著作物・キャラクターと類似していないかを人間の目で慎重に確認する体制が不可欠であることが、改めて浮き彫りになりました。
企業の広告制作における今後の課題
ウテナのような長年の歴史を持つ化粧品メーカーがこうした事案に直面したことは、業界全体に大きな警鐘を鳴らしています。生成AIを活用すれば、低コストかつ短納期でビジュアル制作が可能になる一方で、ブランド毀損や法的リスクとのトレードオフが存在します。
対応策としては、(1) 生成AIで作成したクリエイティブに対する第三者によるレビュー工程の必須化、(2) 既存作品との類似性を確認する画像検索ベースのチェックツール導入、(3) 著作権・肖像権・パブリシティ権に関する社内ガイドラインの整備、(4) 生成AIベンダーが提供する補償制度の活用検討、などが挙げられます。今回のウテナの謝罪と即時撤去対応は、企業としての誠実な姿勢を示したものですが、本来は公開前の段階で問題を発見できる体制づくりが重要です。
知っておくと便利なTips
- 生成AI画像の類似性チェックには、Google画像検索やTinEyeなどの逆画像検索ツールが有効
- Adobe Fireflyなど商用利用補償付きの生成AIサービスを選ぶことでリスクを軽減可能
- 社内に「AI利用ガイドライン」を整備し、商用利用前のレビュープロセスを明文化することが推奨される
- 既存IPに似たビジュアル傾向を持つプロンプト(特定の作品名、キャラ名、特定のアニメ調表現の指定)は避けるのが安全
まとめ
ウテナの広告がアニメ作品に酷似していると指摘され、謝罪・撤去に至った今回の事案は、生成AI時代の広告制作における新たなリスクを企業が直視する必要性を示しています。AI活用による効率化は魅力的ですが、最終的な責任は発信する企業側にあります。生成AIのアウトプットを商業利用する際には、人間によるダブルチェック、類似性検証、ガイドライン整備という三つの柱を確立することが、ブランドを守る上で欠かせません。技術の進化と並走する形で、コンプライアンス体制も同時にアップデートしていく姿勢が、これからの企業に求められています。
📎 元記事: https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2605/07/news075.html




