米国司法省(DoJ)が、「豚の屠殺(ピッグ・ブッチャリング)」と呼ばれる暗号通貨投資詐欺に関連して、6100万ドル(約91億円)相当のテザー(USDT)を押収したことを発表しました。押収された資金は、暗号通貨投資詐欺の被害者から盗まれた犯罪収益のマネーロンダリングに使用されていたアドレスから追跡されたものです。暗号通貨関連の詐欺被害が拡大する中、法執行機関とテザー社の連携による大規模な資産凍結の実態をお伝えします。
この記事のポイント
- 米司法省が「豚の屠殺」詐欺に関連する6100万ドル相当のテザーを押収
- 詐欺グループは出会い系アプリで接近し、偽の投資プラットフォームで被害者から資金を騙し取る手口を使用
- テザー社は2025年6月以降、詐欺ネットワーク関連で約2億5000万ドルの資産を凍結、全体では42億ドル規模の不正資産を凍結済み
「豚の屠殺(ピッグ・ブッチャリング)」詐欺とは何か
「豚の屠殺」とは、被害者を「太らせてから屠殺する」という比喩から名付けられた暗号通貨詐欺の手口です。犯罪者はまず出会い系アプリやSNSを通じて被害者に接近し、恋愛関係を構築します。信頼関係を築いた後、偽の暗号通貨投資プラットフォームに誘導します。このプラットフォームでは偽のポートフォリオが表示され、異常に高いリターンがあるかのように見せかけます。被害者がより大きな金額を投資するよう促し、十分な資金を集めた段階で姿を消すという巧妙な手口です。被害者が出金を試みると、追加の手数料を要求してさらに資金を搾取するケースも報告されています。
東南アジアの詐欺コンパウンドの実態
特に深刻なのは、この詐欺スキームの背後にある人身売買の問題です。東南アジアの詐欺コンパウンド(詐欺拠点施設)では、人身売買によって連れてこられた個人がパスポートを没収され、詐欺行為への参加を強制されています。これらの施設では、被害者でありながら同時に加害者にもなるという二重の悲劇が生まれています。HSIシャーロット支局のカイル・D・バーンズ特別捜査官代理は「犯罪者とプロのマネーロンダリング業者がサイバー詐欺スキームを利用して被害者を騙し、不正に得た利益を隠蔽している」と述べています。
マネーロンダリングの手法
被害者が暗号通貨を犯罪者のウォレットに送金すると、犯罪者は資金を複数のウォレットを経由してルーティングします。この「チェーンホッピング」と呼ばれる手法により、資金の性質、出所、所有者を不明瞭にし、法執行機関による追跡を困難にしています。しかし今回の事例では、ブロックチェーン分析技術の進歩により、複雑な取引経路を追跡し、最終的に6100万ドルの押収に至ることができました。暗号通貨は匿名性が高いと思われがちですが、実際にはブロックチェーン上のすべての取引が記録されており、専門的な分析ツールを用いれば追跡が可能です。
テザー社による不正資産凍結の取り組み
テザー社は不正活動に対して積極的な対応を進めています。同社の報告によると、全体で約42億ドル(約6300億円)の不正活動に関連する資産を凍結しており、2025年6月以降だけでも詐欺ネットワークに関連して約2億5000万ドル(約375億円)を凍結しています。ステーブルコインの発行体として、法執行機関と連携した資産凍結機能を持つことが、犯罪抑止に大きな役割を果たしていることが示されています。これはブロックチェーン技術と中央集権的な管理のハイブリッドモデルが、犯罪対策において有効に機能している例と言えます。
知っておくと便利なTips
- SNSや出会い系アプリで知り合った人物からの投資勧誘には極めて慎重に対応すること。異常に高いリターンを約束する投資話は詐欺の可能性が高い
- 暗号通貨の送金は取り消しが困難なため、送金先のウォレットアドレスや投資プラットフォームの正当性を必ず確認すること
- 暗号通貨詐欺の被害に遭った場合は、速やかに法執行機関やFBIのIC3(インターネット犯罪苦情センター)に報告することが重要
まとめ
今回の6100万ドル規模のテザー押収は、暗号通貨を悪用した詐欺に対する法執行機関の追跡・押収能力が着実に向上していることを示しています。「豚の屠殺」詐欺は、恋愛感情を利用した巧妙なソーシャルエンジニアリングと暗号通貨のマネーロンダリングを組み合わせた深刻な犯罪であり、東南アジアでの人身売買問題とも密接に関連しています。テザー社が42億ドル規模の不正資産凍結を実施していることは、暗号通貨業界と法執行機関の連携が強化されていることの表れです。個人としても、SNS経由の投資勧誘に対する警戒心を持ち、暗号通貨投資の際には十分な調査と注意を払うことが求められています。
📎 元記事: https://thehackernews.com/2026/02/doj-seizes-61-million-in-tether-linked.html

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