農業は新しい資産形成になるか?夢と現実のギャップを徹底解説

農業を「自分らしい生き方」や「新しい資産形成の手段」として注目する人が増えている。20年にわたり就農希望者を支援してきた東京都農業会議の松澤龍人氏が、農業で食べていくことの夢と厳しい現実を率直に語った東洋経済オンラインの記事を紹介する。

この記事のポイント

  • 農業は精神的充足感をもたらすが、経営として成り立たせるには相当な覚悟と計画が必要
  • 初年度の売上は平均30〜50万円程度。二段構えの収入戦略が不可欠
  • 東京は「買う人が多く、作る人が少ない」ため、実は都市農業に大きな可能性がある

就農希望者のリアルな姿

松澤氏は「東京NEO-FARMERS!」というコミュニティの発起人として、非農家出身で農業を始める人々を数多く見守ってきた。就農希望者には共通する特徴がある。「祖父母が農家で幼少期に少し手伝った思い出がある」「学生時代に農業体験をした」「手仕事が好き」「会社員生活に疲れた」——こうした動機で農業の世界に足を踏み入れる人が多いという。「食べものを作れるようになれば、この先何が起きても生き延びられる」という考え方に共感する人も少なくない。しかし松澤氏は「実際は農業だけで生活していくことはとても大変なこと」と率直に指摘する。

心の豊かさと経営の厳しさ

NEO-FARMERS!のメンバーたちは「まったく何もない大地でゼロから作物を育て、収穫することが、自信や充足感といった心の豊かさにつながっている」と語る。農業がもたらす精神的価値は疑いようがない。しかし経営面の現実は厳しい。松澤氏が支援した事例では、初年度の売り上げが約210万円というケースがあった。これは業界平均の「初年度30万円〜50万円」を大きく上回る好成績だが、それでも持続的な生活を支えるには心もとない数字だ。そのため松澤氏は、夫婦で農業を始めるなら「夫が農家・妻が会社員」という二段構えを推奨する。農業収入は天候や市況で「ガクンと落ちる可能性」があるため、安定した収入源の確保が経営存続の生命線となる。

農業を始めやすい人・始めにくい人

松澤氏によれば、気軽に就農を目指せるのは若い人たちだ。「若ければ、たとえ農業で失敗したとしても第二新卒のように就職を目指す道がある」という。独身の若年層や子どもがいない共働き夫婦は、相対的にリスクが低い。一方で「子どもが生まれたばかり」「住宅ローンがある」「妻が非正規雇用」といった状況の人は、家計の安定が最優先であり「就農のタイミングではない」と明確に線を引く。興味深いのは個人事業主に対する評価だ。農業経営には「年間150日以上は農業に従事しなくてはいけない」という規定があるが、在宅で完結する仕事なら農地の近くに引っ越しながら本業を続けられる。ただし農作業の体力消費は想像以上に大きく、二足のわらじを履く覚悟と工夫が求められる。

東京農業の意外なポテンシャル

記事の中で最も興味深いのが、東京での農業が「意外と有望な選択肢」であるという指摘だ。その理由はシンプルで「買う人が圧倒的に多く、作る人が少ない」という需給バランスにある。地方から新鮮な農産物を輸送するのは難しく、地元産の野菜には強い訴求力がある。東京の消費者は「田園風景への憧れ」と「東京産農作物への親近感」を持っており、直売所や学校給食、レストランとの直接取引など、農協を介さない独自の販売チャネルを構築できる強みがある。立川、八王子などでは、シェフが農家に直接買い付けに来るケースもあり、「東京ローカルの強み」を活かした成功事例が生まれている。

知っておくと便利なTips

  • 就農前に「農業体験」や「週末農業」で適性を確認するのが失敗回避の第一歩
  • 初期の収入減に備え、最低でも1〜2年分の生活費を貯蓄しておくと安心
  • 東京都農業会議などの公的支援機関を活用すれば、農地確保や経営相談のサポートが受けられる
  • 販路開拓は農協頼みにせず、直売所・学校給食・飲食店との直接契約を早期に構築する

まとめ

農業を「新しい資産形成」と捉える発想は魅力的だが、現実は甘くない。初年度の平均売上は30〜50万円にとどまり、安定経営までには長い試行錯誤の期間が必要だ。しかし、精神的充足感や「何が起きても食べていける」という安心感は金銭では測れない価値を持つ。特に東京のような都市部では、消費者との距離の近さが独自の強みとなり得る。農業に興味があるなら、まずは現在の仕事を維持しながら小さく始め、自分に合うかどうかを見極めることが最も現実的なアプローチだろう。夢だけでなく、堅実な計画を持って一歩を踏み出すことが成功への鍵となる。


📎 元記事: https://toyokeizai.net/articles/-/934833?utm_source=rss&utm_medium=http&utm_campaign=link_back

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