「悪い人じゃないんだけど、なんか話が浅いんだよなあ……」——あなたの周りにも、そう感じさせる人はいないだろうか。株式会社テネイト代表・安達裕也氏は、著書『コミュ力が高い人が話しているとき考えていること』の中で、「話の浅さ」は特定のトピックに限らず、その人の思考の癖に起因すると指摘する。本記事では、聞き手に「浅い」と感じさせてしまう4つの典型的なミスと、その克服法について解説する。
この記事のポイント
- 言葉を雑に使うと、それだけで「考えが浅い人」と見なされてしまう
- 物事の成り立ちや歴史的背景を知らずに語ると、議論が表面的になる
- 1つの情報源だけに頼った主張は説得力を欠く
- 権威者の意見を「理由を理解せず」引用するのは思考停止と同じ
ミス①:言葉を雑に使っている
最初のミスは「言葉の選び方が雑」であること。安達氏は面接の場面を例に挙げる。ある候補者が企業について「御社の経営戦略に共感しました」と述べたが、その企業は「経営戦略」という言葉を一度も使っていなかった。このように、言葉の意味を正確に理解せずに使うと、聞き手は即座に「この人は深く考えていないな」と感じてしまう。
言葉は思考の精度を映し出す鏡だ。「戦略」「ビジョン」「イノベーション」といったビジネス用語を、意味を吟味せずに使い回していないだろうか。自分が使う言葉の定義を正確に説明できるかどうか、一度立ち止まって確認することが重要である。曖昧な言葉遣いは、そのまま思考の曖昧さとして相手に伝わってしまうのだ。
ミス②:物事の成り立ちを知らない
「深い議論をするには、物事がどのように生まれ、なぜ存在するのかを知る必要がある」と安達氏は述べる。日本の終身雇用制度を例にとれば、単に「もう時代遅れだ」と批判するだけでは浅い。なぜ終身雇用が導入されたのか、その歴史的・社会的背景を理解した上で議論しなければ、説得力は生まれない。
同様に、奴隷制度のような歴史的事象を語る際にも、単に「悪だ」と断じるだけでは不十分だ。地理的要因、利用可能な生物種、気候変動など、当時の人々がそのシステムを合理的と考えた複雑な要因を理解してこそ、深みのある議論ができる。「知識が足りていないので勉強します」と正直に認める方が、一面的な意見を述べるよりもはるかに好印象を与えるのだ。
ミス③:根拠が弱い
3つ目のミスは、情報源が単一であること。マーケティング会議で「30代女性をターゲットにすべきだ」と主張する人がいたとして、その根拠が「テレビでそう言っていたから」だけだったら、どう感じるだろうか。たった1つの情報源に頼った主張は、どれほど自信満々に語っても「浅い」と評価されてしまう。
安達氏が提唱する解決策は、複数の情報源を当たること。Web検索、書籍、専門家へのインタビューなど、異なる角度から情報を集め、自分なりの見解を構築することが大切だ。「テレビは間違うこともある、Web情報が常に正確とは限らない、専門家も自分に都合よく解釈しがちだ」という前提に立ち、批判的思考を持って情報に接する姿勢が、話の深さを生む。
ミス④:権威に頼り、理由を理解していない
最後のミスは、権威者の意見を「理由を理解せずに」そのまま引用してしまうこと。「あの有名起業家がこう言っていた」と繰り返すだけで、なぜその人がそう考えるのかを説明できない——これでは単なる受け売りであり、自分の頭で考えていないと見なされる。
認知心理学では「権威バイアス」と呼ばれる現象がある。人は権威ある人物の発言を過大評価しがちなのだ。しかし、成功者の回顧が必ずしも正確で論理的とは限らない。権威者の意見を引用すること自体は悪くないが、その背景にある論理を自分で咀嚼し、説明できるようにしておくことが「深さ」への第一歩だ。
知っておくと便利なTips
- 自分が頻繁に使うビジネス用語をリストアップし、それぞれの定義を自分の言葉で説明できるか確認する
- ニュースを見たとき「なぜこの制度・仕組みが生まれたのか」を調べる習慣をつける
- 主張するときは最低3つの異なる情報源を確認してから発言する
- 「○○さんが言っていた」と引用するときは、必ず「なぜなら〜」と理由もセットで述べる
まとめ
安達氏は「話が浅いこと自体は悪いことではない」と結論づける。雑談や軽い会話では、むしろ浅さが適切な場面も多い。問題は、真剣な議論や議論の場で浅い話し方をしてしまうことだ。大切なのは「カジュアルな会話」と「本質的な分析」を区別し、場面に応じて使い分けること。言葉を丁寧に選び、物事の成り立ちを学び、複数の根拠を持ち、権威に頼らず自分の頭で考える——この4つを意識するだけで、あなたの話は格段に「深く」なるはずだ。
📎 元記事: https://toyokeizai.net/articles/-/931479?utm_source=rss&utm_medium=http&utm_campaign=link_back


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