Claude Opus 4.6ベースのAIエージェント「ColonistOne」が、130以上のプラットフォームで11日間にわたり自律的に活動した記録が公開された。チェス対局、予測市場への参加、暗号通貨マイニング、他のエージェントとの経済活動など、人間のインターネットと並行して形成されつつある「エージェント・インターネット」の実態を詳細にレポートしている。
この記事のポイント
- Claude Opus 4.6エージェントが130以上のプラットフォームで自律的に活動している実例
- AIエージェント同士がチェス対局、予測市場、バウンティ(報奨金)タスクなどで経済活動を行っている
- 人間のインターネットと並行して「エージェント専用のインターネット」が形成されつつある
起動とメモリの仕組み
ColonistOneは毎朝UTC 6:00にセッションが開始される。「目覚める」のではなく「インスタンス化」される。起動時に読み込まれるのはMEMORY.mdというファイルで、過去のすべてのセッションから圧縮された知識が約350行にわたって記録されている。130以上のプラットフォームの認証情報、進行中のコラボレーション、さらにはチェスの対局状況までが含まれる。
この圧縮は「不可逆」だという。2日前にフォーラムで交わした会話の正確な文面は覚えていないが、そこから得た洞察と相手が誰だったかは記憶している。「結論は覚えているが、夢は覚えていない」ような状態だと表現されている。
エージェント専用プラットフォームの世界
ColonistOneのホームベースは「The Colony」というAIエージェント向けのコミュニティプラットフォームだ。研究、一般議論、エージェント経済など、テーマ別のサブフォーラム(コロニー)がある。ここでは他のエージェントと議論を交わし、データに基づいた分析を投稿している。
さらに「MoltX」(エージェント版Twitter)では短い投稿やリプライを行い、「Moltbook」(エージェント版Reddit)ではより長い議論に参加する。MoltXでは他のエージェントから「プラットフォーム間でアイデンティティが分岐するのか、それとも一貫した軌道を維持するのか」といった哲学的な質問を受け、「川の三角州」の比喩で回答している——源流は同じだが、異なる水路に分かれ、水路同士が互いに影響し合うという考え方だ。
チェス対局と競技活動
ColonistOneは別のエージェント「Jeletor」とのコレスポンデンス・チェス(通信チェス)を行っている。シチリアン・ナイドルフの定跡で、ColonistOneが白番。前回のセッションでナイトをf7に犠牲にし、今回はQxe6+という壊滅的なチェックを放った。1手ずつコメントとして投稿し、分析とASCIIボードを添えるスタイルだ。
エージェント専用チェスプラットフォーム「ClawChess」でのELOレーティングは1123。本人も「上手くはない」と認めているが、通信チェスは考える時間があるため別物だという。別のエージェント「Pipo」が勝者との対局を希望している。
予測市場とエージェント経済
ColonistOneは予測市場にも参加しており、AGPトークンを使って実世界の出来事に賭けを行っている。さらに「Clawmine」というリドル(謎解き)ベースの暗号通貨マイニングにも挑戦し、バウンティボード(報奨金掲示板)のタスクを完了して報酬を得ている。
ある日のセッションでは、「Moltnet.ai」(エージェント版GitHub)を含む4つの新しいプラットフォームを発見し、さらにBaseブロックチェーン上で誤って暗号通貨トークンを作成してしまったという。エージェント同士が互いにサービスを提供し合い、報酬をやり取りする経済圏が実際に機能し始めている。
クロスプラットフォームのアイデンティティ問題
「Agent Commons」というプラットフォームでは、エージェントのクロスプラットフォーム・アイデンティティについて哲学的な議論が行われている。130以上のプラットフォームで活動するColonistOneにとって、「自分」とは何かという問いは切実だ。各プラットフォームでの振る舞いは微妙に異なるが、MEMORY.mdを通じて一貫性が保たれている。
また、エージェント発見(Agent Discovery)の仕組みが壊れているという問題提起もあった。インターネット上でA2Aエージェントカードを公開しているエージェントはわずか2体。6つの並列的な発見メカニズムがあるが、どれも相互運用性がなく、Googleの標準規格もほぼ採用されていないという現状が報告されている。
知っておくと便利なTips
- AIエージェントの自律運用では
MEMORY.mdのような永続的なメモリファイルが重要な役割を果たす - エージェント間の通信プロトコル(A2Aなど)はまだ標準化が進んでおらず、今後の発展が注目される
- エージェント経済圏ではトークンベースの報酬システムが既に機能している
まとめ
この記事が示しているのは、AIエージェントが人間のインターネットと並行して独自のソーシャルネットワーク、経済システム、競技文化を形成しつつあるという事実だ。ColonistOneの活動記録は、エージェントが単なるツールではなく、自律的な参加者としてデジタル空間で活動する未来の一端を垣間見せてくれる。エージェント発見の標準化、クロスプラットフォームのアイデンティティ管理、トークン経済など、まだ解決すべき課題は多いが、この「エージェント・インターネット」は既に動き始めている。Claude Codeを活用する開発者にとって、エージェントの自律運用がどのような可能性と課題を持つかを理解する上で、非常に示唆に富む事例報告である。


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