JR東日本と日本航空(JAL)が、東日本エリアの地方創生を目指した包括的な連携協定を締結しました。鉄道と航空という異なる交通インフラの強みを掛け合わせ、地域の活性化に取り組む新たな試みです。両社はこの協定を「地域未来創生戦略」と名付け、観光・人口・市場の3つの分野で「創出」を目指す意欲的な計画を打ち出しています。
この記事のポイント
- JR東日本とJALが「地域未来創生戦略」として連携協定を締結
- 「広域観光モデル」「関係人口・定住人口」「新たなマーケット」の3つの創出が柱
- 鉄道と航空の立体的な連携により、東日本エリア全体の地方創生に貢献する狙い
鉄道×航空の「立体連携」とは何か
今回の協定の最大の特徴は、JR東日本の鉄道ネットワークとJALの航空ネットワークを組み合わせた「立体連携」という考え方にあります。従来、鉄道と航空は都市間移動における競合関係として語られることが多い交通手段でしたが、両社はその発想を転換し、互いの強みを生かした補完的な関係を築こうとしています。
鉄道は地域内のきめ細かなネットワークに強みを持ち、駅を拠点とした地域密着型のサービスが可能です。一方、航空は長距離移動や都市圏からのアクセスに優れ、国内外からの誘客力があります。この2つを立体的に組み合わせることで、例えば「空港から地方の観光地へ鉄道でスムーズに移動できる」といった、これまで実現が難しかったシームレスな移動体験の提供が期待されます。交通手段の壁を越えた連携は、利用者にとっての利便性向上だけでなく、地方の交通課題解決にも大きく寄与する可能性があります。
3つの「創出」戦略の詳細
両社が掲げる「地域未来創生戦略」は、以下の3つの創出を軸に展開されます。
1. 広域観光モデルの創出
東日本エリアには、東北・北陸・信越など多彩な観光資源が点在しています。しかし、個々の地域だけでは集客力に限界があるのも事実です。鉄道と航空の連携により、複数の地域を周遊する「広域観光モデル」を新たに創出することで、観光客の滞在日数の増加や消費額の拡大を狙います。例えば、羽田空港から東北の地方空港へ飛び、そこからJRの観光列車で複数の温泉地や景勝地を巡るといった、これまでにない旅の形が生まれる可能性があります。
2. 関係人口・定住人口の創出
観光にとどまらず、地域との継続的なつながりを持つ「関係人口」の増加、さらには定住人口の創出も目標に掲げています。リモートワークの普及により、地方への移住・二拠点生活への関心が高まっている中、移動手段の充実は地方移住の大きなハードルの一つを取り除くことになります。鉄道と航空の組み合わせにより、都市部との行き来がしやすい環境を整えることで、地方での暮らしやすさを向上させる狙いがあります。
3. 新たなマーケットの創出
3つ目の柱は、鉄道と航空の連携から生まれる新たなビジネス機会の創出です。両社のデータや顧客基盤を活用した新サービスの開発、地域の特産品や文化を活かした商品開発など、交通インフラの枠を超えた新市場の開拓が期待されます。MaaS(Mobility as a Service)の観点からも、異なる交通モードを統合したサービス提供は今後ますます重要になるとみられています。
地方創生における交通連携の意義
日本の地方部では、人口減少と高齢化に伴い公共交通の維持が大きな課題となっています。地方路線の赤字問題は鉄道・航空の両方で深刻化しており、個社の努力だけでは解決が困難な状況です。今回のような異業種・異モード間の連携は、限られたリソースを効率的に活用しながら地域全体の交通ネットワークを維持・発展させるための重要なアプローチと言えます。
また、インバウンド(訪日外国人旅行者)需要の回復・拡大が続く中、地方への誘客は観光立国を目指す日本にとって重要な課題です。都市部に集中しがちなインバウンド需要を地方に分散させるためには、空港から地方都市・観光地へのスムーズなアクセスが不可欠であり、鉄道と航空の連携はその鍵を握る存在となるでしょう。
今後の展開と期待される効果
協定の締結は第一歩に過ぎず、今後は具体的な施策やサービスが順次発表されていく見通しです。想定される取り組みとしては、共同の旅行商品の開発、乗り継ぎの利便性向上のためのダイヤ調整、共通ポイントプログラムの連携、デジタルチケットの統合などが考えられます。
特に注目されるのは、両社が持つデータの相互活用です。JR東日本のSuicaデータやJALのマイレージデータなど、膨大な移動・消費データを組み合わせることで、地域のニーズに合ったきめ細かなサービス設計が可能になるとみられています。テクノロジーを活用した地方創生の新しいモデルケースとして、他の地域や企業への波及効果も期待されます。
知っておくと便利なTips
- JR東日本とJALはそれぞれ「JRE POINT」「JALマイル」という大規模なポイントプログラムを運営しており、今後これらの連携が進む可能性がある
- MaaS(Mobility as a Service)は複数の交通手段を統合して提供するサービス概念で、今回の連携はその実践例として注目に値する
- 「関係人口」とは、移住でも観光でもない形で地域と多様に関わる人々を指す概念で、近年の地方創生政策の重要キーワードとなっている
まとめ
JR東日本とJALの「地域未来創生戦略」協定は、鉄道と航空という日本の二大交通インフラが本格的に手を組む画期的な取り組みです。広域観光・関係人口・新マーケットの3つの創出を柱に、東日本エリアの地方創生に挑みます。人口減少社会における地方の持続可能性を高めるためには、従来の縦割りを超えた連携が不可欠であり、今回の協定はその象徴的な一歩と言えるでしょう。具体的なサービスや施策の展開が今後どのように進むか、引き続き注目していきたいところです。
📎 元記事: https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2084130.html


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