東急不動産が北海道石狩市に建設中のデータセンターに、NTT東日本の次世代通信基盤「IOWN APN」が導入されることが明らかになりました。石狩市と東京・大手町間をIOWNで接続するのは初の事例であり、再生可能エネルギーを活用したデータセンターと最先端の光通信技術の組み合わせが、日本のデジタルインフラの新たな方向性を示しています。
この記事のポイント
- 東急不動産の「石狩再エネデータセンター第1号」にNTT東日本のIOWN APNが導入される
- 石狩市と東京・大手町間をIOWNで接続するのは初めての取り組み
- データセンターは2025年3月完成予定、IOWN対応は8月から開始
IOWN APNとは何か
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は、NTTグループが推進する次世代通信基盤構想です。その中核技術であるAPN(All-Photonics Network)は、ネットワークの端から端までを光信号のまま伝送する「オールフォトニクス・ネットワーク」を実現します。従来の通信では、光信号を電気信号に変換して処理し、再び光信号に戻すという工程が必要でしたが、APNではこの電気変換を排除することで、大幅な低遅延・大容量・低消費電力を実現します。
NTT東日本はすでに複数のエリアでIOWN APNの商用サービスを展開しており、金融取引やリアルタイム映像伝送など、超低遅延が求められる分野での活用が進んでいます。今回の石狩−大手町間への導入は、長距離区間におけるIOWNの実用性を示す重要な一歩となります。
石狩再エネデータセンターの特徴
「石狩再エネデータセンター第1号」は、東急不動産が北海道石狩市に建設を進めているデータセンターで、2025年3月の完成を予定しています。北海道の冷涼な気候を活かした自然冷却による省エネルギー運用と、再生可能エネルギーの活用を大きな特徴としています。
近年、AIやクラウドサービスの急速な普及により、データセンターの電力消費は大きな社会課題となっています。石狩エリアは風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーが豊富であり、寒冷地の気候を利用したサーバー冷却により、従来のデータセンターと比較して大幅な省エネルギーを実現できます。東急不動産はこの地の利を活かし、環境負荷の低いデータセンター運営を目指しています。
石狩−大手町間のIOWN接続が持つ意味
今回のIOWN APN導入により、石狩市と東京・大手町間が超低遅延の光通信で結ばれます。これまで北海道のデータセンターは、東京との物理的距離がネットワーク遅延(レイテンシ)の面で課題となるケースがありました。特にリアルタイム性が求められる金融取引、遠隔医療、ライブストリーミングなどの用途では、数ミリ秒の遅延差が大きな意味を持ちます。
IOWN APNは電気変換によるボトルネックを排除することで、従来の通信と比較して遅延を大幅に削減します。これにより、北海道という地理的に離れた場所にあるデータセンターでも、東京圏のユーザーに対して高品質なサービスを提供することが可能になります。再エネ活用による環境面のメリットと、IOWN APNによる通信品質の両立は、今後のデータセンター立地戦略に大きな影響を与えるでしょう。
データセンター業界の動向と今後の展望
日本国内では、AIブームに伴うデータセンター需要の急増を背景に、北海道・九州・東北など、東京圏以外へのデータセンター建設が加速しています。政府もデジタルインフラの地方分散を推進しており、地方自治体の誘致活動も活発化しています。石狩市は、さくらインターネットの石狩データセンターをはじめ、複数のデータセンターが集積するエリアとして知られており、今回の東急不動産の参入はその流れをさらに加速させるものです。
IOWN技術の普及により、地方データセンターの「距離のハンディキャップ」が解消されれば、再生可能エネルギーが豊富な地域へのデータセンター立地がより合理的な選択肢となります。環境負荷の低減とサービス品質の両立という、これまでトレードオフとされてきた課題に対する有力な解決策として、今後の展開が注目されます。
知っておくと便利なTips
- IOWN APNは2023年から商用サービスが開始されており、対応エリアは順次拡大中。利用を検討する場合はNTT東日本・NTT西日本の最新の提供エリア情報を確認するとよい
- データセンター選定の際は、ネットワーク遅延だけでなく、電力コスト・再エネ比率・BCP(事業継続計画)の観点も重要な判断材料となる
- 石狩エリアのデータセンターは冷涼な気候によりPUE(電力使用効率)が優れており、ランニングコストの面でも東京圏より有利なケースがある
まとめ
東急不動産の石狩再エネデータセンターへのIOWN APN導入は、再生可能エネルギーと次世代光通信技術を組み合わせた先進的な取り組みです。石狩−大手町間をIOWNで接続する初の事例として、地方データセンターの通信品質に関する懸念を払拭し、環境配慮型のデータセンター立地を後押しする可能性を秘めています。2025年3月のデータセンター完成、そして8月のIOWN対応開始に向けて、日本のデジタルインフラがまた一つ新たなステージに進むことになります。AIやクラウドの需要拡大が続く中、こうした環境と性能を両立するインフラ整備の動向は、IT業界に携わるすべての人にとって注目すべきテーマです。
📎 元記事: https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2084112.html


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