米国のロボット掃除機メーカーiRobotが、連邦破産法第11章(チャプター11)に基づく再建手続きから離脱したことが発表されました。中国の投資会社PICEAとの戦略的取引の完了により、同社は新たなスタートを切ることになります。かつてルンバで家庭用ロボット掃除機市場を切り開いたパイオニア企業の復活劇に注目が集まっています。
この記事のポイント
- iRobotがチャプター11(連邦破産法第11章)の再建手続きから正式に離脱
- 中国の投資会社PICEAとの戦略的取引が完了
- 事業継続のための新たな資本・経営体制が整備された
チャプター11とは何か
米国の連邦破産法第11章、通称「チャプター11」は、企業が事業を継続しながら債務を再編成するための法的手続きです。日本の民事再生法に相当する制度で、企業は破産宣告を受けることなく、裁判所の監督下で事業を継続しながら再建計画を策定・実行することができます。
チャプター11の申請中、企業は債権者からの取り立てを一時的に停止させる「自動停止」の保護を受けることができます。これにより、経営陣は事業運営に集中しながら、債務の減額交渉や資産売却、新たな投資家の誘致などを行うことが可能になります。過去には航空会社や小売チェーンなど、多くの大企業がこの制度を活用して再建を果たしてきました。
iRobotの苦境と再建への道のり
iRobotは1990年にMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者らによって設立され、2002年に発売した家庭用ロボット掃除機「ルンバ」で世界的な成功を収めました。ロボット掃除機という新たな製品カテゴリーを確立し、長年にわたり市場のリーダーとして君臨してきました。
しかし近年、中国メーカーをはじめとする競合他社の台頭により、市場シェアの低下と収益性の悪化に直面していました。特にEcovacs(エコバックス)やRoborock(ロボロック)といった中国企業が、高性能かつ低価格の製品を次々と投入し、iRobotの市場ポジションを脅かしていました。
2022年にはAmazonによる約17億ドルでの買収が発表されましたが、EU(欧州連合)の規制当局による競争法上の懸念から、2024年に買収計画は撤回されました。この買収失敗により、iRobotは深刻な財務危機に陥り、大規模なリストラを実施。最終的にチャプター11の申請に至りました。
PICEAとの戦略的取引の意義
今回発表された中国PICEAとの戦略的取引は、iRobotにとって再建への重要な転機となります。PICEAは中国を拠点とする投資会社で、この取引によりiRobotに対する実質的な経営権を取得したとみられます。
皮肉なことに、中国企業との競争で苦境に陥ったiRobotが、中国資本によって救済されるという構図になりました。しかしこの提携により、iRobotは中国市場へのアクセス改善や、製造コストの削減、サプライチェーンの最適化といったメリットを享受できる可能性があります。
一方で、米中関係が緊張する中での中国企業への売却については、今後規制当局や消費者からの監視が強まる可能性も指摘されています。特にロボット掃除機は家庭内のマッピングデータを収集する機能を持つため、データプライバシーの観点からの懸念も存在します。
ロボット掃除機市場の現状と展望
世界のロボット掃除機市場は、スマートホーム化の進展やAI技術の発達により、今後も成長が期待されています。市場調査によると、2030年までに市場規模は現在の2倍以上に拡大するとの予測もあります。
現在の市場では、中国メーカーが価格競争力と技術革新の両面で優位に立っています。自動ゴミ収集機能、モップ掛け機能、高度な障害物回避機能など、かつてiRobotが先駆けた技術を、中国メーカーがより安価に提供するようになりました。
iRobotが再建後にどのような戦略で市場に臨むかは未知数ですが、PICEAの支援を得て、コスト構造の改善と製品ラインナップの刷新を図ることが予想されます。ブランド価値と技術的な蓄積を活かしつつ、新たな競争環境に適応できるかが、同社の将来を左右することになるでしょう。
知っておくと便利なTips
- チャプター11は企業の「終わり」ではなく「再生」の手続き。過去にはGMやデルタ航空など多くの大企業が再建に成功している
- ロボット掃除機を選ぶ際は、本体価格だけでなく消耗品のコストや修理対応も含めた総コストを考慮することが重要
- 海外メーカーの製品を購入する際は、日本国内でのサポート体制を事前に確認しておくと安心
まとめ
iRobotのチャプター11離脱は、ロボット掃除機市場のパイオニア企業が新たな章を開く象徴的な出来事です。Amazon買収の失敗から一時は存続すら危ぶまれましたが、中国PICEAとの戦略的提携により再建の道筋をつけることができました。今後は新たな資本・経営体制のもと、激化する市場競争の中でいかにブランドを再構築していくかが注目されます。テクノロジー業界では、一度躓いた企業が復活を遂げた例は少なくありません。iRobotがルンバブランドの価値を活かし、再び革新的な製品で市場を驚かせる日が来ることを期待したいところです。
📎 元記事: https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2601/27/news098.html


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