AWSの重大設定ミスが発覚!サプライチェーン攻撃の危機からクラウドセキュリティを学ぶ

AWSの重大設定ミスが発覚!サプライチェーン攻撃の危機からクラウドセキュリティを学ぶ Tips

AWSの重大設定ミスが発覚!サプライチェーン攻撃の危機からクラウドセキュリティを学ぶ

Amazon Web Services(AWS)の内部プロジェクトで発見された重大な設定ミスが、世界中のAWS利用者に衝撃を与えています。「CodeBreach」と名付けられたこの脆弱性は、AWSが管理するGitHubリポジトリの完全な乗っ取りを可能にするものでした。もしこの脆弱性が悪用されていれば、AWS JavaScript SDKなどの重要なライブラリにバックドアが仕込まれ、全世界のAWS環境がサプライチェーン攻撃の危機に晒されていた可能性があります。本記事では、この事例から学ぶべきCI/CDパイプラインのセキュリティ対策について詳しく解説いたします。

この記事のポイント

  • AWS CodeBuildのWebhookフィルター設定に正規表現の欠陥があった
  • 攻撃者が新規GitHubアカウントを作成するだけでビルドをトリガー可能だった
  • AWS SDK、暗号ライブラリなど4つの重要リポジトリが影響を受けた
  • 正規表現アンカー(^と$)の欠如が根本原因であり、同様のミスは多くの組織で起こりうる

CodeBreach脆弱性の技術的背景

この脆弱性は、クラウドセキュリティ企業Wizによって発見されました。問題の核心は、AWS CodeBuildのWebhookフィルター機能における正規表現パターンの不備にあります。本来、このフィルターは「信頼できるGitHubユーザーのみがビルドをトリガーできる」よう設計されていました。しかし、正規表現パターンに開始アンカー(^)と終了アンカー($)が含まれていなかったため、重大なセキュリティホールが生まれていました。

具体的には、信頼されたメンテナーのGitHub IDが「755743」だった場合、このIDを「含む」任意の新しいIDでフィルターを通過できてしまう状態でした。GitHubはユーザーIDを順番に割り当てる仕組みのため、攻撃者は新しいアカウントを大量に作成することで、「7557431」「17557432」といった9桁のIDを取得し、6桁の信頼されたIDを「飲み込む」ことが可能でした。これは正規表現における部分一致と完全一致の違いを悪用した巧妙な手法です。

攻撃シナリオと影響範囲

この脆弱性を悪用した攻撃シナリオは、驚くほど単純かつ効果的でした。攻撃者はまず、数百の新規GitHubボットアカウントを自動的に登録し、目的のアクターIDを持つアカウントを取得します。そのアカウントを使ってプルリクエストを作成すると、AWS CodeBuildのWebhookフィルターをバイパスしてビルドがトリガーされます。

ビルドプロセスが実行されると、攻撃者はGitHub管理者トークンを取得できる状態にありました。このトークンがあれば、mainブランチへの直接的なコード注入や、プルリクエストの不正承認が可能になります。影響を受けていたリポジトリは、aws-sdk-js-v3(AWS JavaScript SDK)、aws-lc(AWS暗号ライブラリ)、amazon-corretto-crypto-provider(暗号プロバイダー)、awslabs/open-data-registry(オープンデータレジストリ)の4つでした。

特にaws-sdk-js-v3は、世界中の無数のアプリケーションで使用されているライブラリです。もしここにバックドアが仕込まれていれば、影響は計り知れないものになっていたでしょう。これはまさに、SolarWinds事件やCodecov事件と同様のサプライチェーン攻撃の入り口となりうる脆弱性でした。

なぜこのような設定ミスが起きたのか

この脆弱性の根本原因は、一見すると些細な正規表現の記述ミスです。しかし、このような問題は決してAWSだけの特殊なケースではありません。多くの組織のCI/CDパイプラインで同様の設定ミスが潜んでいる可能性があります。

正規表現でユーザーIDをフィルタリングする場合、「^755743$」のようにアンカーを付けることで完全一致を強制する必要があります。しかし、「755743」のようにアンカーなしで記述すると、その文字列を「含む」すべての値にマッチしてしまいます。この違いは、セキュリティに精通していないエンジニアには見落とされがちです。

さらに、GitHubのユーザーID割り当てが順番に行われるという仕様も、この攻撃を可能にした要因です。これは公開情報であり、攻撃者はこの仕組みを熟知した上で攻撃を計画できました。セキュリティ設計では、このような外部サービスの仕様も考慮に入れる必要があります。

実践してみよう

重要: 以下は、CI/CDパイプラインのセキュリティを強化するためのコマンド例です。

# AWS CodeBuildプロジェクトのWebhook設定を確認
aws codebuild batch-get-projects --names "your-project-name" | jq '.projects[].webhook'

# GitHubのWebhook設定を一覧表示
gh api repos/{owner}/{repo}/hooks

# 正規表現のテスト(完全一致パターンの確認)
echo "755743" | grep -E "^755743$"  # 完全一致でマッチ
echo "7557431" | grep -E "^755743$"  # 完全一致ではマッチしない

# CodeBuildのビルド履歴から不審なトリガーを確認
aws codebuild list-builds-for-project --project-name "your-project" --sort-order DESCENDING | head -20

上記のコマンドを使用して、まず現在の設定を監査することをお勧めします。特にWebhookフィルターで正規表現を使用している場合は、アンカーが正しく設定されているか確認してください。また、定期的にビルド履歴を確認し、不審なトリガーがないかモニタリングすることも重要です。

セキュリティTips

  • Tip 1: 正規表現には必ずアンカーを付ける – ユーザーIDやブランチ名でフィルタリングする際は、「^」と「$」を使って完全一致を強制しましょう。部分一致は予期しない入力を許可してしまう危険があります。多くのセキュリティインシデントが、この基本的なミスから発生しています。

  • Tip 2: 最小権限の原則を徹底する – CI/CDパイプラインで使用するトークンやクレデンシャルは、必要最小限の権限に制限しましょう。プロジェクトごとに個別のPersonal Access Token(PAT)を発行し、リポジトリ横断的なアクセスを避けることが重要です。

  • Tip 3: プルリクエスト承認ゲートを有効化する – 外部からのプルリクエストがCI/CDをトリガーする前に、信頼できるメンテナーによる承認を必須にしましょう。これにより、悪意のあるコードがビルドプロセスに入り込むリスクを大幅に低減できます。

  • Tip 4: 定期的なセキュリティ監査を実施する – CI/CD設定は一度作ったら終わりではありません。定期的に設定を見直し、新しい攻撃手法に対応できているか確認しましょう。特に、外部サービスとの連携部分は脆弱性が生まれやすいポイントです。

まとめ

今回のAWS CodeBreach脆弱性は、クラウド最大手のAWSでさえCI/CDセキュリティの設定ミスを犯しうることを示す重要な事例です。幸い、この脆弱性はWizによる責任ある開示を受けて2025年9月に修正され、実際の攻撃は確認されていません。AWSは「これはCodeBuildサービス自体の問題ではなく、プロジェクト固有の設定ミスである」と説明していますが、この説明自体が重要な教訓を含んでいます。

つまり、どれほど優れたセキュリティサービスを使用していても、設定次第で脆弱性は生まれるということです。正規表現のアンカー、最小権限の原則、承認ゲートの設定といった基本的な対策を怠れば、サプライチェーン攻撃という最悪のシナリオを招きかねません。自組織のCI/CDパイプラインを今一度見直し、同様の設定ミスがないか確認することを強くお勧めいたします。セキュリティは終わりのない旅路ですが、基本を押さえることで多くのリスクを回避できるのです。


📎 元記事: https://thehackernews.com/2026/01/aws-codebuild-misconfiguration-exposed.html

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